AERA.dotのランキングも誤解を招きかねない

AERA.dotに、

「女子不利」他大学でも? 女子が「合格しにくい」医学部ランキング

と題された記事が掲載された。

これまで、石嶺嶺司氏、ハフポスト、読売新聞が医学科における女子合格率についてランキングを作成して公表してきた。しかしそのどれをとっても、入試の実態とは異なる印象を読者に与えかねないものであった。今回、AERA.dotが作成したランキングも同様の問題点を抱えている。

今回のAERAが計算した値は、

(合格者数に占める女子比率)/(志願者数に占める女子比率)

である。おそらく前後期一般入試の人数を合算して計算していると思われる。この値が小さいほど女子が「合格しにくい」とされている。

そもそも東京女子医大がなぜかランキングに入っていて、これは一体何を比較しているのかよくわからなくさせているのはご愛敬として、例えば、長年男女別の入試データを公開している新潟大がなぜかランキングに入っていない。AERA.dotでは

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と述べており、この書き方では新潟大に対してフェアとは言えない。

次に、今回のAERA.dotのランキングは、2018年度と2017年度の数値を表記している点で、経年変化に配慮したものであることは確かである。しかし、2018年度に「女子が合格しにくい」大学、たとえば北海道大学と、2018年度に女子が「合格しやすい」大学、たとえば金沢大学を見たとき、2017年度の値がほぼ逆転していることに注目すれば、この数値の経年変化がかなり大きい可能性が示唆される。

 

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実際、このランキングを見た読者は、過去7年の経年変化がどのようになっているのかということについて十分には想像できないのではないか。男女別のデータを公表しているいくつかの大学で試算すると次のようになる。

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一見してすぐわかるように、このデータの経年変化はかなり大きい。ランキングも年ごとに大きく変動していることがわかる。こうしたデータを表に出さずに公表されるランキングは状況をミスリードしかねず非常に危うい。

そして相変わらず志願者ベースで計算している。この数値を受験者ベースで計算すると上の経年変化は次のように変わる。

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もちろん全体の大きな傾向が歴然と変わるわけではない。(そもそも最近は後期試験を実施しない医学科も多い。)ランキング順位の変化や値の変化が大きい大学もある。いくつか典型的なものを抜き出してみると次のようになる。

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このように、前期・後期いずれも試験を実施する大学同士で比較しても、志願者ベースと受験者ベースで値があまり変わらない大学とかなり変わる大学とがある。志願者ベースで計算したランキングは、やはり実態とは異なる危うさを持つ。

さらに、前後期合算である。前期試験と後期試験は試験問題はもちろん試験科目そのものが異なるので、合算した値を比較すると実態とは異なる危険性がある。例えばいくつかの大学で前後期をわけて数値を示してみると次のようになる。一応、AERA.dotに合わせるため、まずは志願者ベースの経年変化を示す。二重線が後期試験である。

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受験者ベースでの経年変化は次のようになる。

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前期試験は、もともと志願者と受験者の数が大きく変動しないので、ほぼ同じグラフとなるが、後期試験は志願者と受験者が大きく異なり、値のかなり変化していることがわかる。